ベントナイトなどの層状珪酸塩系鉱物を含有するきのこの人工栽培用培地、およびそれを用いるきのこの人工栽培方法
【課題】腐生性きのこの菌糸の成長を促進することができる人工栽培用培地を提供する。
【解決手段】食用または薬用の腐生性きのこを栽培するための人工栽培用培地であって、きのこが資化性を有する有機基質と、層状珪酸塩系鉱物とを含むことを特徴とする人工栽培用培地を提供する。なお、この層状珪酸塩系鉱物は、ベントナイトおよびバーミキュライトの両方を含む混合物であってもよい。また、この層状珪酸塩系鉱物の重量比の含有率は、1%以上20%以下とすることができる。
【解決手段】食用または薬用の腐生性きのこを栽培するための人工栽培用培地であって、きのこが資化性を有する有機基質と、層状珪酸塩系鉱物とを含むことを特徴とする人工栽培用培地を提供する。なお、この層状珪酸塩系鉱物は、ベントナイトおよびバーミキュライトの両方を含む混合物であってもよい。また、この層状珪酸塩系鉱物の重量比の含有率は、1%以上20%以下とすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベントナイトなどの層状珪酸塩鉱物を含有するきのこの人工栽培用培地、およびそれを用いるきのこの人工栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、腐生性きのこであるシイタケ、ヒラタケ、エノキタケ、ナメコ、エリンギ等の食用または薬用のきのこは、菌床栽培法により周年栽培が可能となって生産量は飛躍的に増大している。しかし、これらの生産量は未だに栽培者間でバラツキが大きく不安定であるため、栽培者からは収量の安定化、それに直結するきのこ栽培の増収剤または菌床の開発が求められている。
【0003】
従来の腐生性きのこの人工栽培用培地は、広葉オガ、針葉オガ等の大鋸屑、またはこれに替わるコーンコブ、コットンハル等の有機物を主材とし、栄養体として米ぬか、フスマ、大豆粕等を用い、これに水を加えて水分量を調整し、必要に応じてpH調整のために加えるpH調整剤を含んでいる。
【0004】
従来のきのこの人工栽培用培地に関する技術としては、例えば特許文献1~4に記載されたものがある。
【0005】
【特許文献1】特開平6-105618号公報
【特許文献2】特開2002-121092号公報
【特許文献3】特開平5-211819号公報
【特許文献4】特開平8-322381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の腐生性きのこの人工栽培用培地を用いた人工栽培用培地では、菌を接種後、菌糸が蔓延し、きのこの発生準備ができるまでの培養日数として、おおよそエノキで25日、ナメコで55日、エリンギで40日と長い期間を必要としている。
【0007】
また、特許文献1に記載の技術では、多孔質結晶鉱物の(テクト(網状)珪酸塩鉱物中の一つのグループである)沸石グループに属するゼオライトが用いられており、機能的には、ゼオライトは結晶構造内の多孔質内部を利用することにより、カビなどの発生を抑制していると想定されるが、腐生性きのこの菌糸の生育を促進することができるか否かは不明である。
【0008】
さらに、特許文献2に記載の技術では、ベントナイトを焼成して炭化物にして使用している。そして、この炭化物に微生物および該微生物の栄養源を添加し、微生物が働くことを条件としている。ところが、一般的に、人工栽培用培地を用いるきのこ栽培では、120℃で滅菌処理をするため、120℃では微生物の生存は困難であるため、微生物を添加することは適さない点で改善の余地がある。
【0009】
そして、特許文献3に記載の技術では、バーミキュライトを使用しているが、菌根菌きのこの菌糸培養を目的としており、腐生性きのこの栽培とは目的が全く異なるので、腐生性きのこの菌糸の生育を促進することができるか否かは不明である。
【0010】
また、特許文献4に記載の技術では、無機化合物3種の添加行うことにより、キノコの収量を増加しているが、腐生性きのこの菌糸の生育を促進することができるか否かは不明である。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、腐生性きのこの菌糸の成長を促進することができる人工栽培用培地を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、食用または薬用の腐生性きのこを栽培するための人工栽培用培地であって、きのこが資化性を有する有機基質と、層状珪酸塩系鉱物と、を含むことを特徴とする人工栽培用培地が提供される。
【0013】
この構成によれば、食用または薬用の腐生性きのこが資化性を有する有機基質に、適量の層状型珪酸塩系鉱物を加えることにより、その腐生性きのこの菌糸の成長を促進することができる。
【0014】
また、本発明によれば、食用または薬用の腐生性きのこを生産するための人工栽培方法であって、上述の人工栽培用培地に、きのこの種菌を接種するステップと、きのこの種菌を接種された人工栽培用培地をインキュベーションして、きのこの菌糸を成長させ、きのこの子実体を生成させるステップと、を含むことを特徴とする人工栽培方法が提供される。
【0015】
この方法によれば、食用または薬用の腐生性きのこが資化性を有する有機基質に、適量の層状型珪酸塩系鉱物を加えることにより、その腐生性きのこの菌糸の成長を促進することができる。
【0016】
なお、上記のきのこの人工栽培用培地及びそれを用いるきのこの人工培養方法は本発明の一態様であり、本発明のきのこの人工栽培用培地及びそれを用いるきのこの人工培養方法は、以上の構成要素の任意の組合せであってもよい。また、本発明のきのこの人工培養システム、きのこの生産方法なども、同様の構成を有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、食用または薬用の腐生性きのこが資化性を有する有機基質に、適量の層状型珪酸塩系鉱物を加えることにより、その腐生性きのこの菌糸の成長を促進することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0019】
本実施形態における人工栽培用培地は、食用または薬用の腐生性きのこを栽培するための人工栽培用培地である。また、この人工栽培用培地は、きのこが資化性を有する有機基質と、層状珪酸塩系鉱物とを含む。
【0020】
この構成によれば、腐生性きのこの菌糸の成長を促し、菌糸の蔓延速度を速め、培養日数を短縮して、きのこ菌の接種から収穫までのサイクルを短くすることができる。その結果、この構成によれば、一定期間における腐生性きのこの収穫回数を多くすると共に、培養スペースの回転効率を上げることができる。
【0021】
すなわち、本実施形態における人工栽培用培地によれば、きのこが資化性を有する有機基質に対して、適量のベントナイト、バーミキュライト等の層状型珪酸塩鉱物を単体、または複合体で加えることにより、腐生性きのこの菌糸の成長度を増すことができる。その結果、この構成によれば、腐生性きのこの培養日数を短縮することができる。
【0022】
ここで、上述のきのこは、樹木の倒木や落ち葉などを分解して栄養源とする腐生性(ふせいせい)のきのこと、生きた樹木の根と共生関係を保ちながら生育する菌根性(きんこんせい)のきのことに大別することができる。腐生性きのことしては、例えば、シイタケ、ヒラタケ、エノキタケ、ナメコ、エリンギ、ブナシメジ、タモギタケなどが挙げられる。一方、菌根性のきのことしては、例えば、マツタケ、ホンシメジなどが挙げられる。
【0023】
エノキタケ(榎茸、学名:Flammulina velutipes)は、キシメジ科のきのこの一種である。エノキタケの子実体は古くから食用とされ、別名エノキダケ、ナメタケ、ナメススキ、ユキノシタとも呼ばれる。
【0024】
また、エノキタケは、広葉樹の枯れ木や切り株に寄生する木材腐朽菌である。さらに、エノキタケの子実体の発生時期は、気温の低い季節であり、晩秋から初春にかけて、雪の中からさえも発生する。
【0025】
今日、エノキタケは、工場におけるびん栽培によって1年中出回るきのこであり、野生のエノキタケと非常に異なる姿のもやし状態に育てたものが一般に出回っている。そのため、野生、あるいは、ほだ木栽培のエノキタケと、びん栽培のエノキタケとでは味覚も多少異なる場合がある。また、エノキタケは、加熱すると粘りが出るため、それを生かした料理に適し、鍋物や炒め物、煮物に使われる。なお、エノキタケは、中国では便秘の特効薬として使われる。
【0026】
ナメコ(滑子)は、モエギタケ科スギタケ属のキノコの一種である。なお、ナメコは、日本原産であり、学名もPholiota namekoという。また、ナメコは、ブナやナラなどの枯れ木や切り株などに群生する。さらに、ナメコは、茶褐色のかさと白色又は茶色の茎とを持つ。そして、ナメコには、滑りがあり、別名ナメタケ、ヌメリタケと呼ぶ地域もある。
【0027】
さらに、ナメコは、食用で味噌汁の具、おひたしをはじめとして、料理に多用される。天然のものと人工栽培のものがある。ナメコの天然物は、秋のきのこシ-ズンには10月下旬から12月上旬にかけて、ブナ等の広葉樹の倒木、立ち枯れ木、切り株などに群生する秋を代表するキノコの一つである。キノコの傘の直径は3~8cm、表面は茶褐色から橙褐色で粘性が強い。現在、1年中市販されるナメコは、オガ屑促成栽培品などでそれなりに天然物に近い味わいを実現しているが、天然物と同じ原木ナメコとは、味覚が多少異なる場合もある。
【0028】
エリンギ(学名:Pleurotus eryngii)は、食用のキノコの一種である。なお、エリンギには、セリ科のエリンジウムに寄生して生成し、日本には自生しておらず和名もない。
【0029】
また、エリンギは、マツタケによく似た食感だが、香りが松茸に比べると薄い。しかし、エリンギは、値段が格段に安く味も良いため、近年よく食べられている。さらに、エリンギは、アワビに似た食感と評されることもあり、縦に走る繊維と直角に切ったものを中華スープと醤油で煮込んだものや、食べやすい大きさに裂いてバターで炒めたものなどに調理されてよく食べられている。
【0030】
図15は、層状珪酸塩系鉱物の四面体層と八面体層の組合せについて説明するための概念図である。上述の層状珪酸塩系鉱物は、複鎖状の角閃石に次ぐ高圧の下に形成されたものと考えられ、図15に示すように、高圧cis型の単鎖状(あるいは複鎖状)のSiO4チェーンが横(b軸)方向にも無限に連結し、SiO4六角環がハチの巣のようにびっしり並んだ平面状のSiO4シートを形作っている。SiO4六角環1個当たりの最小構成単位は、複鎖状チェーンでは4個のSiO4四面体が必要であったのに対し、SiO4シートでは、複鎖状チェーンをb軸方向に連結することにより新たに2倍の六角環が生じるため、2個のSiO4四面体で十分である。
【0031】
従って、層状珪酸塩系鉱物の基本組成は[(Si2O5)2-]nで表され、代表的な例としては、白雲母KAl2(AlSi3O10)(OH)2や黒雲母K(Mg,Fe)3(AlSi3O10)(OH)2などの雲母鉱物と、カオリナイトAl2(Si2O5)(OH)4で代表される粘土鉱物がある。 また、この他にもタルクMg3(Si2O5)2(OH)2や緑泥石(Mg,Fe,Al)6(Si,Al)4O10(OH)8など、層状珪酸塩系鉱物の種類は多い。なお、層状珪酸塩系鉱物は、マクロの形状としては、粒状または粉体状のいずれの形状であってもよい。
【0032】
ベントナイトは、化学組成別鉱物分類において、珪酸塩系鉱物に含まれ、その中の層状珪酸塩系鉱物として分類される。層状珪酸塩系鉱物は、さらに、雲母グループ、緑泥石グループ、カオリナイトなどの蛇紋石グループ、スメクタイトグループに分類されるが、この内、ベントナイトはスメクタイトグループに属する。
【0033】
ベントナイトは、粘土鉱物モンモリロナイトを主成分として、石英、α-クリストバライト、オパールなどの珪酸鉱物を副成分として、長石、マイカ、ゼオライトなどの珪酸塩鉱物、カルサイト、ドロマイト、ジプサムなどの炭酸塩鉱物や硫酸塩鉱物、さらにパイライトなどの硫化鉱物を随伴する弱アルカリ性粘土岩の名称である。ベントナイトは膨潤する土であることから、別名「膨潤土」と称されている。
【0034】
ベントナイトに含有される各鉱物を構成する元素は、地殻を構成する主要元素Si,Al,Fe,Mg,Ca,Na,K,O,H,S,Cからなっており、一般的な岩石の化学組成と類似している。なお、ベントナイトの一般的な化学組成を化学式1に示す。
【0035】
(Na,Ca)0.3(Al,Mg)2Si4O10(OH)2・nH2O・・・化学式1
【0036】
一方、バーミキュライトも、スメクタイトグループに属する。より詳しくは、バーミキュライトとは、マグネシア(MgO)の多い輝岩が、熱水の影響でアルカリ分逸脱して水分が加わり、雲母の性質を帯びた鉱物で雲母の一種である。そのため、バーミキュライトは薄い膜状の鉱物が幾層にも積み重なった構造をしている。
【0037】
バーミキュライトの化学主成分としては、シリカ(SiO2)やアルミナ(Al2O3)マグネシア(MgO)分がある。バーミキュライトを約800~1000度で加熱することにより、雲母の層がアコ-デオン状に剥離膨張し容積を増やす様子が、蛭が伸びるようになるので、バーミキュライトには蛭石の別名がある。バーミキュライトは、この雲母の層の隙間が大きい為に、乾燥した状態では空気が入り軽くなり、また、水が入ると保水機能が高くなる性質を有する。なお、バーミキュライトの一般的な化学組成を化学式2に示す。
【0038】
(Mg,Fe,Al)3(Al,Si)4O10(OH)2・4H2O・・・化学式2
【0039】
ベントナイト、バーミキュライト等の層状珪酸塩鉱物は、保水力、保肥力、遠赤外線効果などを持つと言われており、培地に添加することにより、従来の培地に比べて適正な水分を菌糸に持続的に供給し、イオン交換作用による過剰なミネラル成分を取り込み、不足するミネラル成分を供給する働きを持つと考えられる。さらに、遠赤外線効果により菌糸の活性を増長すると考えられる。これらの効果が相乗効果として、従来の培地よりも、優れた菌糸の成長効果が得られたと判断する。
【0040】
さらに、ベントナイト等は、pH7.5からpH10.5(2%溶液)と弱アルカリ性であるため、酸性傾向となる培地にpH調整剤を添加しなくても、菌糸の生育範囲のpH値を保つことができる。
【0041】
ここで、上述の人工栽培用培地において、層状珪酸塩系鉱物の含有率(重量比)は、1%以上20%以下の範囲内であることが好ましい。実施例で後述する表1で示すように、層状珪酸塩系の含有率(重量比)がこの範囲内であれば、食用または薬用の腐生性きのこの菌糸の生育が促進されるからである。
【0042】
特に、層状珪酸塩系鉱物がベントナイトである場合には、ベントナイトの含有率(重量比)は、3%以上20%以下の範囲内であることが好ましく、3%以上8%以内の範囲内であれば最も好ましい。ベントナイトの含有率(重量比)が8%を超えると、製造コストが上昇し、粘性が高くなりすぎて、攪拌の際に攪拌機に大きな負荷がかかる場合がある。
【0043】
また、層状珪酸塩系鉱物がバーミキュライトである場合には、バーミキュライトの含有率(重量比)は、1%以上20%以下の範囲内であることが好ましい。なお、後述する実施例で示したバーミキュライトの含有率は容量比で記載しているが、バーミキュライトのかさ比重は約0.1であるため、バーミキュライトの含有率(容量比)15%は含有率(重量比)1.5%程度に相当する。
【0044】
また、きのこが資化性を有する有機基質としては、例えば、大鋸屑(おがくず)などの木屑、またはこれに替わるコーンコブ、コットンハル、落花生穀粉等を用いることができる。なお、木屑を用いる場合には、広葉オガまたは針葉オガ等を用いることができ、どちらが好適であるかはきのこの種類によって異なる。例えば、広葉オガとしては、コナラ、ミズナラなどの広葉樹系木材から得られる木屑を用いることができる。また、エノキタケの栽培を行う場合には、針葉オガを用いる方が菌糸の生育が良好である。
【0045】
また、上述のきのこが資化性を有する有機基質には、きのこの菌糸の生育を促進するために、大鋸屑にくわえて、別の資化性に優れる栄養体が含まれていることが好ましい。このような栄養体としては、例えば、米ぬか、コーンブラン、大豆粕およびフスマなどを好適に用いることができる。
【0046】
さらに、上述のきのこの人工栽培用培地には、適量の水分が加えられて、適切な範囲の水分量が調整されることが好ましい。そして、上述のきのこの人工栽培用培地には、pH調整のために加えるpH調整剤や、きのこの子実体の収量を増加させるための増収剤や、人工栽培用培地を成形するために用いる塑糊剤などが含まれていてもよい。
【0047】
以下、本実施形態における人工栽培用培地の作用効果について説明する。
【0048】
本実施形態における人工栽培用培地は、食用または薬用の腐生性きのこを栽培するための人工栽培用培地である。また、この人工栽培用培地は、きのこが資化性を有する有機基質と、層状珪酸塩系鉱物とを含む。このように、腐生性きのこが資化性を有する有機基質を含む人工栽培用培地に、さらに層状珪酸塩系鉱物を含有させることにより、食用または薬用の腐生性きのこの菌糸の生育を促進することができる。その結果、この方法によれば、腐生性きのこの子実体を発生させるまでの培養日数を短縮することができる。
【0049】
本実施形態における人工栽培方法は、食用または薬用の腐生性きのこを生産するための人工栽培方法である。また、この人工栽培方法は、上述の人工栽培用培地に、きのこの種菌を接種するステップと、きのこの種菌を接種された人工栽培用培地をインキュベーションして、きのこの菌糸を成長させ、きのこの子実体を生成させるステップとを含む。
【0050】
このように、腐生性きのこが資化性を有する有機基質を含む人工栽培用培地に、さらに層状珪酸塩系鉱物を含有させることにより、食用または薬用の腐生性きのこの菌糸の生育を促進することができる。その結果、この方法によれば、腐生性きのこの子実体を発生させるまでの培養日数を短縮することができる。
【0051】
本実施形態における人工栽培用培地において、上述の層状珪酸塩系鉱物は、スメクタイトグループに属する鉱物を含んでもよい。このとき、上述の層状珪酸塩系鉱物は、ベントナイトまたはバーミキュライトに属する鉱物を含んでもよい。
【0052】
すなわち、本実施形態では、特許文献1に記載のテクト(網状)珪酸塩鉱物中のひとつである沸石グループに属するゼオライトなどとは異なり、フィロ(層状)珪酸塩鉱物中のひとつであるスメクタイトグループに属するベントナイトなどを用いる。そのため、特許文献1では、機能的には、ゼオライト等の結晶構造内の多孔質内部を利用するが、本実施形態では、ベントナイト等の層間の働きを主として利用するため、機能を発揮するメカニズムが全く異なる。
【0053】
よって、特許文献1に記載の技術では、腐生性きのこの菌糸の生育を促進することができるか否かは不明であるが、本実施形態では、腐生性きのこの菌糸の成長を促進することができる。その結果、本実施形態では、腐生性きのこの子実体を発生させるまでの培養日数を短縮することができる。
【0054】
本実施形態における人工栽培用培地において、上述の層状珪酸塩系鉱物は、ベントナイトおよびバーミキュライトの両方を含む混合物であってもよい。
【0055】
この構成によれば、後述する実施例の表5に示すように、腐生性きのこが資化性を有する有機基質を含む人工栽培用培地に、さらにベントナイトおよびバーミキュライトの両方を含む混合物を含有させることにより、ベントナイトおよびバーミキュライトの相乗効果が得られるため、腐生性きのこの菌糸の成長をより一層促進することができる。
【0056】
本実施形態における人工栽培用培地において、上述の層状珪酸塩系鉱物の形状は、粒状または粉体状であってもよい。
【0057】
この構成によれば、層状珪酸塩系鉱物の形状が、表面積の大きい粒状または粉体状であるため、層状珪酸塩系鉱物同士の間に適切な空隙を確保することができ、ベントナイト等の層間の空間をより効率的に機能させることができる。その結果、この構成によれば、腐生性きのこの菌糸の成長を促進することができ、腐生性きのこの子実体を発生させるまでの培養日数を短縮することができる。
【0058】
本実施形態における人工栽培用培地において、上述の層状珪酸塩系鉱物の重量比の含有率は、1%以上20%以下とすることができる。
【0059】
この構成によれば、後述する実施例の表5に示すように、腐生性きのこが資化性を有する有機基質を含む人工栽培用培地に、適切な量の層状珪酸塩系鉱物を含有させることにより、ベントナイト等の層間の空間として、適切な量の空間を確保することができ、ベントナイト等の層間の空間を適切な範囲内で機能させることができる。その結果、この構成によれば、腐生性きのこの菌糸の成長を促進することができ、腐生性きのこの子実体を発生させるまでの培養日数を短縮することができる。
【0060】
本実施形態における人工栽培用培地において、上述の有機基質は、広葉オガ、針葉オガ、コットンハル、コーンコブおよび落花生穀粉からなる群から選ばれる1種以上の基材と、米ぬか、コーンブラン、大豆粕およびフスマからなる群から選ばれる1種以上の栄養体とを含んでもよい。
【0061】
この構成によれば、後述する実施例の各表に示すように、広葉オガ、針葉オガ、コットンハル、コーンコブおよび落花生穀粉からなる群から選ばれる1種以上の基材と、米ぬか、コーンブラン、大豆粕およびフスマからなる群から選ばれる1種以上の栄養体とを用いるため、腐生性きのこの菌糸の好適な成長を実現することができ、腐生性きのこの子実体を順調に収穫することができる。
【0062】
本実施形態における人工栽培用培地において、上述の食用または薬用の腐生性きのこは、エノキタケ、ナメコ、エリンギ、ブナシメジ、ハナビラタケおよびシイタケからなる群から得られる1種以上のきのこであってもよい。
【0063】
この構成によれば、エノキタケ、ナメコ、エリンギ、ブナシメジ、ハナビラタケおよびシイタケは、いずれも腐生性のきのこであるため、後述する実施例の各表に示すように、腐生性きのこが資化性を有する有機基質を含む人工栽培用培地に、さらに層状珪酸塩系鉱物を含有させることにより、食用または薬用の腐生性きのこの菌糸の生育を促進することができる。その結果、この方法によれば、腐生性きのこの子実体を発生させるまでの培養日数を短縮することができる。
【0064】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0065】
例えば、上記実施の形態では、腐生性のきのことして、エノキタケ、ナメコ、エリンギ、ブナシメジ、ハナビラタケおよびシイタケを例に挙げたが、特に限定する趣旨ではない。例えば、ヒラタケ、タモギタケなどを用いてもよい。これらのきのこも同様に腐生性のきのこであるため、同様に菌糸の生育を促進することができ、きのこの子実体を発生させるまでの培養日数を短縮することができる。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0067】
なお、本実施例では、有機物および栄養体を含む基本培地にベントナイトまたはバーミキュライトを含有させ、エノキタケ、ナメコ、エリンギなどを培養した場合の複数の種類の実験内容を示す。
【0068】
1.エノキタケのベントナイト含有量による菌糸成長比較
試験管1本あたり、広葉オガ90ccに、米ぬか、コーンブランおよびフスマの重量比が2%、3%、5%となるように、それぞれを栄養体として添加し、水分量を約65%に調整した条件で攪拌して培地を作製した。以下、この培地を基本培地と称する。
【0069】
さらに、この基本培地に、重量比が3%、5%、8%、10%、12%、20%となるように、ベントナイトをそれぞれ添加し、水分量を約65%に調整をした培地を作製し、30mmφの試験管に各4本ずつ充填し、オートクレーブにて滅菌処理を行い、エノキタケの菌糸を接種し、活着後に一定期間経過後の時点からの菌糸成長を測定した。この比較測定結果を表1、図1および図2に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
この表1、図1および図2の結果から、ベントナイトの含有量が3%以上20%以下の範囲内では、エノキタケの菌糸伸長は良好であることが分かる。なお、ベントナイトの扱いやすさや、コスト等を考慮すると、ベントナイトの含有量は3%以上8%以下の範囲内がより好適であると判断される。
【0072】
2.他のきのこによる菌糸成長比較
上述のように、エノキタケによるベントナイトの成長促進実験の結果は有効であった。次に、エノキタケ以外のきのこにも、ベントナイトの成長促進作用が認められるかについて、確認のための実験を行った。
【0073】
上述の基本培地と、この基本培地にベントナイトを重量比5%加えたものと、をそれぞれ同じ種類の試験管に同量充填し、ナメコ、エリンギの菌糸をそれぞれ接種した。これらの接種した菌糸が活着後に一定期間経過後の時点からの菌糸成長を、比較して測定した結果を表2、図3および図4に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
表2、図3および図4に示したように、ナメコ、エリンギについても、ベントナイトを重量比5%含有させた基本培地においては、エノキタケと同様に、菌糸成長を促進する効果が得られた。
【0076】
3.その他の層状珪酸塩鉱物による効果
その他の層状珪酸塩鉱物を含有する培地として、主材の広葉オガの容量比を75%とし、バーミキュライトの容量比を25%とした培地を作製し、米ぬか、コーンブランおよびフスマをそれぞれ重量比の2%、3%、5%となるように栄養体としてこの培地に添加し、水分量約65%にて攪拌した培地を作製した。
【0077】
そして、この培地と、上述の基本培地と、を同じ種類の試験管に同量充填し、エノキタケを摂取して菌糸の成長比較を行った。これらの培地間の菌糸成長の比較結果を表3に示す。
【0078】
【表3】
【0079】
表3に示したように、バーミキュライトを含有させた培地でも、ベントナイトを含有させた培地と同様に、菌糸成長を促進する効果があることを確認することができた。
【0080】
4.ベントナイトおよびバーミキュライトの相乗効果
また、2種類以上の層状珪酸塩鉱物の混合物の効果を確認することを目的として、主材の広葉オガの容量比を85%とし、バーミキュライトの容量比を15%とした培地を作製し、米ぬか、コーンブランおよびフスマをそれぞれ重量比が2%、3%、5%となるように栄養体としてこの培地に添加し、さらに、ベントナイトの重量比が5%となるように添加した上で、水分量約65%に調整された培地を作製した。以下、この培地を複合培地と称する。
【0081】
次いで、上述の複合培地と、上述の基本培地との間で、エノキタケの菌糸成長比較を行った。これらの培地間の菌糸成長の比較結果を表4、図5および図6に示す。
【0082】
【表4】
【0083】
表4、図5および図6に示したように、ベントナイトおよびバーミキュライトを両方含む複合培地では、基本培地に比べて(さらには、基本培地にベントナイトを単独で加えた培地および基本培地にバーミキュライトを単独で加えた培地に比べても)、エノキタケの菌糸成長が促進されることが分かった。このことから、複合培地では、ベントナイトおよびバーミキュライトの相乗効果が得られることが示唆される。
【0084】
5.その他の有機物を主材とした場合のベントナイトおよびバーミキュライトの相乗効果
主材として、その他の有機物を用いた場合でも、ベントナイトおよびバーミキュライトの相乗効果があるか確認することを目的として、主材としてコーンコブと落花生穀粉とを容量比で7対3に配合した培地に、米ぬか、コーンブランおよびフスマをそれぞれ重量比の2%、3%、5%となるように栄養体として添加した培地を作製した。また、この培地にベントナイトを重量比で5%添加した培地を作製した。
【0085】
さらに、主材としてコーンコブ対落花生穀粉対バーミキュライトを、容量比で55対20対25となるように配合した培地に、米ぬか、コーンブランおよびフスマをそれぞれ重量比の2%、3%、5%となるように栄養体として添加し、水分量約65%に調整された培地を作製した。
【0086】
また、主材としてコーンコブ対落花生穀粉対バーミキュライトを、容量比で65対20対15となるように配合した培地に、米ぬか、コーンブランおよびフスマをそれぞれ重量比の2%、3%、5%となるように栄養体として添加した培地に、さらにベントナイトを重量比5%となるように添加した上で、水分量約65%に調整された培地を作製した。これら4種類の培地について、エノキタケの菌糸成長を比較した結果を表5、図7および図8に示す。
【0087】
【表5】
【0088】
表5、図7および図8に示したように、コーンコブおよび落花生穀粉の有機物を主材とする培地では、菌糸成長は全体的に遅いが、成長度の比較においては、広葉オガを主材とする培地の場合と同様に、ベントナイトまたはバーミキュライトを添加することにより、菌糸成長を促進することができ、ベントナイトおよびバーミキュライトの混合物を添加することにより、さらに一層菌糸成長を促進することができることがわかる。
【0089】
6.ビン栽培による菌糸蔓延日数比較
上述のように、試験管によるベントナイトなどの層状珪酸塩鉱物添加は、各種きのこにおいて菌糸成長に効果があることは確認できたが、種菌接種後に一定期間経過した後の時点からの安定した菌糸の成長を確認したことになる。
【0090】
一方、実際の人工栽培においては、種菌接種からどれくらいで菌糸が蔓延するかが重要となるため、実栽培に用いるビン栽培を行った場合、接種から菌糸がどれくらいで蔓延するかの確認を行った。
【0091】
具体的には、主材、栄養対比率はそのままに固定した基本培地と、この基本培地にベントナイトの含有量を重量比5%に固定して、同一条件の環境下にて、エノキタケ、ナメコ、エリンギの培養を850ccのビンにて行った。種菌を接種してから菌糸が蔓延した日数の比較を表6、図9~11に示す。
【0092】
【表6】
【0093】
この表6、図9~11の結果より、ビン栽培におけるエノキタケ、ナメコ、エリンギ、ブナシメジの菌糸が蔓延する日数は、試験管における菌糸成長が裏付けるように、相当日数短縮できることが確認された。
【0094】
7.栽培培養日数、発生から収穫までの日数、収量の比較
上述のように、菌糸蔓延日数については効果が充分あることが確認できた。しかし、エノキタケの場合には、そのまま菌掻き、発生となるが、ナメコ、エリンギの場合には、菌糸蔓延後にも、きのこの発生に向け熟成培養が必要になる。
【0095】
このため、熟成培養日数、発生から収穫までの日数および収量はどのように差異があるのか、エリンギに特定して実験した。この際、基本培地と、基本培地に重量比5%のベントナイトを添加した培地について確認を行った。これらの確認結果を表7および図14に示す。
【0096】
【表7】
【0097】
表7および図14の結果から、菌糸蔓延日数が短縮された分に加え、熟成培養日数も短縮されており、発生から収穫までの日数、子実体の収量についても好適であるという結果が得られた。
【0098】
なお、上述と同様の実験をエノキタケおよびナメコについても行った結果を、図12および図13に示す。図12および図13の結果から、エリンギだけではなく、エノキタケおよびナメコについても、きのこの子実体を発生させるまでの培養日数が短縮されるという結果が得られた。
【0099】
8.まとめ
本実施例の実験結果を、以下の表8にまとめる。
【0100】
【表8】
【0101】
本実施例によれば、ベントナイト等の層状型珪酸塩鉱物を、1種類のみまたは2種類以上混合して培地に加えたことにより、食用または薬用のきのこの培養日数が、表8に示すように、20%以上30%以下の範囲内で短縮することができた。
【0102】
以上、本発明を実施例に基づいて説明した。この実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0103】
たとえば、上記実施例では、主材として広葉オガ、針葉オガ等の大鋸屑、またはこれに替わるコーンコブ、フスマ、落花生穀粉等の有機物を用いたが、一般にきのこの栽培養培地として用いられる他の有機物を用いてもよい。この場合も、ベントナイト、バーミキュライト等の層状型珪酸塩鉱物を、1種類のみまたは2種類以上混合して培地に加えることにより、きのこの培養日数を短縮することができる。
【0104】
また、上記実施例では、栽培されるきのことして、エノキタケ、ナメコ、エリンギ等を用いたが、一般に食用または薬用に栽培される、ブナシメジ、マイタケ、シイタケなどの他のきのこを栽培してもよい。この場合も、ベントナイト、バーミキュライト等の層状型珪酸塩鉱物を、1種類のみまたは2種類以上混合して培地に加えることにより、きのこの培養日数を短縮することができる。
【0105】
また、上記実施例では、添加される栄養体として、米ぬか、コーンブランおよびフスマ等を用いたが、一般にきのこの栽培に用いられる、他の栄養体を用いてもよい。この場合も、ベントナイト、バーミキュライト等の層状型珪酸塩鉱物を、1種類のみまたは2種類以上混合してこれらの栄養体を含む培地に加えることにより、きのこの培養日数を短縮することができる。
【0106】
また、上記実施例では、比較のために主材および栄養体を、きのこの種類が異なる場合にも、同様の種類で、同様の比率にして比較したが、特に上述の種類および比率からなる混合組成に限定する趣旨ではない。
【0107】
例えば、上述の主材および栄養体の種類および比率を変化させて、培地の混合組成を異なる組成にしても、その混合組成がきのこの培養に好適であれば、ベントナイト、バーミキュライト等の層状型珪酸塩鉱物を、1種類のみまたは2種類以上混合して培地に加えることにより、きのこの培養日数を短縮することができる。特に、主材、栄養体を、きのこの種類別に最適な配合にすれば、さらに培養期間短縮に効果があると期待される。
【産業上の利用可能性】
【0108】
以上のように、本発明にかかるきのこの人工栽培用培地は、腐生性きのこの菌糸の成長を促進することができるという効果を有し、きのこの人工栽培用培地、およびそれを用いるきのこの人工栽培方法等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】基本培地中のベントナイト含有率によるエノキタケの菌糸成長の比較結果を示す写真図である。
【図2】図1の比較結果をまとめたグラフである。
【図3】基本培地および基本培地にベントナイト5%(重量比)を含有させた培地の間でのナメコの菌糸成長の比較結果を示す写真図である。
【図4】基本培地および基本培地にベントナイト5%(重量比)を含有させた培地の間でのエリンギの菌糸成長の比較結果を示す写真図である。
【図5】主材を広葉オガとして、左より無添加、ベントナイト5%(重量比)、バーミキュライト25%(容量比)、ベントナイト5%(重量比)+バーミキュライト15%(容量比)の間でのエノキタケの菌糸成長の比較結果を示す写真図である。
【図6】図5の比較結果をまとめたグラフである。
【図7】主材をコーンコブ、落花生穀粉として、左より無添加、ベントナイト5%(重量比)、バーミキュライト25%(容量比)、ベントナイト5%(重量比)+バーミキュライト15%(容量比)の間でのエノキタケの菌糸成長の比較結果を示す写真図である。
【図8】図7の比較結果をまとめたグラフである。
【図9】左側を基本培地とし、右側を基本培地にベントナイト5%(重量比)を含有させた培地とした場合の、エノキタケの菌糸蔓延の比較結果を示す写真図である。
【図10】左側を基本培地とし、右側を基本培地にベントナイト5%(重量比)を含有させた培地とした場合の、ナメコの菌糸蔓延の比較結果を示す写真図である。
【図11】左側を基本培地とし、右側を基本培地にベントナイト5%(重量比)を含有させた培地とした場合の、エリンギの菌糸蔓延の比較結果を示す写真図である。
【図12】左側を基本培地とし、右側を基本培地にベントナイト5%(重量比)を含有させた培地とした場合の、エノキタケの子実体成長差を示す写真図である。
【図13】左側を基本培地とし、右側を基本培地にベントナイト5%(重量比)を含有させた培地とした場合の、ナメコの子実体成長差を示す写真図である。
【図14】左側を基本培地とし、右側を基本培地にベントナイト5%(重量比)を含有させた培地とした場合の、エリンギの子実体成長差を示す写真図である。
【図15】層状珪酸塩系鉱物の四面体層と八面体層の組合せについて説明するための概念図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベントナイトなどの層状珪酸塩鉱物を含有するきのこの人工栽培用培地、およびそれを用いるきのこの人工栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、腐生性きのこであるシイタケ、ヒラタケ、エノキタケ、ナメコ、エリンギ等の食用または薬用のきのこは、菌床栽培法により周年栽培が可能となって生産量は飛躍的に増大している。しかし、これらの生産量は未だに栽培者間でバラツキが大きく不安定であるため、栽培者からは収量の安定化、それに直結するきのこ栽培の増収剤または菌床の開発が求められている。
【0003】
従来の腐生性きのこの人工栽培用培地は、広葉オガ、針葉オガ等の大鋸屑、またはこれに替わるコーンコブ、コットンハル等の有機物を主材とし、栄養体として米ぬか、フスマ、大豆粕等を用い、これに水を加えて水分量を調整し、必要に応じてpH調整のために加えるpH調整剤を含んでいる。
【0004】
従来のきのこの人工栽培用培地に関する技術としては、例えば特許文献1~4に記載されたものがある。
【0005】
【特許文献1】特開平6-105618号公報
【特許文献2】特開2002-121092号公報
【特許文献3】特開平5-211819号公報
【特許文献4】特開平8-322381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の腐生性きのこの人工栽培用培地を用いた人工栽培用培地では、菌を接種後、菌糸が蔓延し、きのこの発生準備ができるまでの培養日数として、おおよそエノキで25日、ナメコで55日、エリンギで40日と長い期間を必要としている。
【0007】
また、特許文献1に記載の技術では、多孔質結晶鉱物の(テクト(網状)珪酸塩鉱物中の一つのグループである)沸石グループに属するゼオライトが用いられており、機能的には、ゼオライトは結晶構造内の多孔質内部を利用することにより、カビなどの発生を抑制していると想定されるが、腐生性きのこの菌糸の生育を促進することができるか否かは不明である。
【0008】
さらに、特許文献2に記載の技術では、ベントナイトを焼成して炭化物にして使用している。そして、この炭化物に微生物および該微生物の栄養源を添加し、微生物が働くことを条件としている。ところが、一般的に、人工栽培用培地を用いるきのこ栽培では、120℃で滅菌処理をするため、120℃では微生物の生存は困難であるため、微生物を添加することは適さない点で改善の余地がある。
【0009】
そして、特許文献3に記載の技術では、バーミキュライトを使用しているが、菌根菌きのこの菌糸培養を目的としており、腐生性きのこの栽培とは目的が全く異なるので、腐生性きのこの菌糸の生育を促進することができるか否かは不明である。
【0010】
また、特許文献4に記載の技術では、無機化合物3種の添加行うことにより、キノコの収量を増加しているが、腐生性きのこの菌糸の生育を促進することができるか否かは不明である。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、腐生性きのこの菌糸の成長を促進することができる人工栽培用培地を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、食用または薬用の腐生性きのこを栽培するための人工栽培用培地であって、きのこが資化性を有する有機基質と、層状珪酸塩系鉱物と、を含むことを特徴とする人工栽培用培地が提供される。
【0013】
この構成によれば、食用または薬用の腐生性きのこが資化性を有する有機基質に、適量の層状型珪酸塩系鉱物を加えることにより、その腐生性きのこの菌糸の成長を促進することができる。
【0014】
また、本発明によれば、食用または薬用の腐生性きのこを生産するための人工栽培方法であって、上述の人工栽培用培地に、きのこの種菌を接種するステップと、きのこの種菌を接種された人工栽培用培地をインキュベーションして、きのこの菌糸を成長させ、きのこの子実体を生成させるステップと、を含むことを特徴とする人工栽培方法が提供される。
【0015】
この方法によれば、食用または薬用の腐生性きのこが資化性を有する有機基質に、適量の層状型珪酸塩系鉱物を加えることにより、その腐生性きのこの菌糸の成長を促進することができる。
【0016】
なお、上記のきのこの人工栽培用培地及びそれを用いるきのこの人工培養方法は本発明の一態様であり、本発明のきのこの人工栽培用培地及びそれを用いるきのこの人工培養方法は、以上の構成要素の任意の組合せであってもよい。また、本発明のきのこの人工培養システム、きのこの生産方法なども、同様の構成を有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、食用または薬用の腐生性きのこが資化性を有する有機基質に、適量の層状型珪酸塩系鉱物を加えることにより、その腐生性きのこの菌糸の成長を促進することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0019】
本実施形態における人工栽培用培地は、食用または薬用の腐生性きのこを栽培するための人工栽培用培地である。また、この人工栽培用培地は、きのこが資化性を有する有機基質と、層状珪酸塩系鉱物とを含む。
【0020】
この構成によれば、腐生性きのこの菌糸の成長を促し、菌糸の蔓延速度を速め、培養日数を短縮して、きのこ菌の接種から収穫までのサイクルを短くすることができる。その結果、この構成によれば、一定期間における腐生性きのこの収穫回数を多くすると共に、培養スペースの回転効率を上げることができる。
【0021】
すなわち、本実施形態における人工栽培用培地によれば、きのこが資化性を有する有機基質に対して、適量のベントナイト、バーミキュライト等の層状型珪酸塩鉱物を単体、または複合体で加えることにより、腐生性きのこの菌糸の成長度を増すことができる。その結果、この構成によれば、腐生性きのこの培養日数を短縮することができる。
【0022】
ここで、上述のきのこは、樹木の倒木や落ち葉などを分解して栄養源とする腐生性(ふせいせい)のきのこと、生きた樹木の根と共生関係を保ちながら生育する菌根性(きんこんせい)のきのことに大別することができる。腐生性きのことしては、例えば、シイタケ、ヒラタケ、エノキタケ、ナメコ、エリンギ、ブナシメジ、タモギタケなどが挙げられる。一方、菌根性のきのことしては、例えば、マツタケ、ホンシメジなどが挙げられる。
【0023】
エノキタケ(榎茸、学名:Flammulina velutipes)は、キシメジ科のきのこの一種である。エノキタケの子実体は古くから食用とされ、別名エノキダケ、ナメタケ、ナメススキ、ユキノシタとも呼ばれる。
【0024】
また、エノキタケは、広葉樹の枯れ木や切り株に寄生する木材腐朽菌である。さらに、エノキタケの子実体の発生時期は、気温の低い季節であり、晩秋から初春にかけて、雪の中からさえも発生する。
【0025】
今日、エノキタケは、工場におけるびん栽培によって1年中出回るきのこであり、野生のエノキタケと非常に異なる姿のもやし状態に育てたものが一般に出回っている。そのため、野生、あるいは、ほだ木栽培のエノキタケと、びん栽培のエノキタケとでは味覚も多少異なる場合がある。また、エノキタケは、加熱すると粘りが出るため、それを生かした料理に適し、鍋物や炒め物、煮物に使われる。なお、エノキタケは、中国では便秘の特効薬として使われる。
【0026】
ナメコ(滑子)は、モエギタケ科スギタケ属のキノコの一種である。なお、ナメコは、日本原産であり、学名もPholiota namekoという。また、ナメコは、ブナやナラなどの枯れ木や切り株などに群生する。さらに、ナメコは、茶褐色のかさと白色又は茶色の茎とを持つ。そして、ナメコには、滑りがあり、別名ナメタケ、ヌメリタケと呼ぶ地域もある。
【0027】
さらに、ナメコは、食用で味噌汁の具、おひたしをはじめとして、料理に多用される。天然のものと人工栽培のものがある。ナメコの天然物は、秋のきのこシ-ズンには10月下旬から12月上旬にかけて、ブナ等の広葉樹の倒木、立ち枯れ木、切り株などに群生する秋を代表するキノコの一つである。キノコの傘の直径は3~8cm、表面は茶褐色から橙褐色で粘性が強い。現在、1年中市販されるナメコは、オガ屑促成栽培品などでそれなりに天然物に近い味わいを実現しているが、天然物と同じ原木ナメコとは、味覚が多少異なる場合もある。
【0028】
エリンギ(学名:Pleurotus eryngii)は、食用のキノコの一種である。なお、エリンギには、セリ科のエリンジウムに寄生して生成し、日本には自生しておらず和名もない。
【0029】
また、エリンギは、マツタケによく似た食感だが、香りが松茸に比べると薄い。しかし、エリンギは、値段が格段に安く味も良いため、近年よく食べられている。さらに、エリンギは、アワビに似た食感と評されることもあり、縦に走る繊維と直角に切ったものを中華スープと醤油で煮込んだものや、食べやすい大きさに裂いてバターで炒めたものなどに調理されてよく食べられている。
【0030】
図15は、層状珪酸塩系鉱物の四面体層と八面体層の組合せについて説明するための概念図である。上述の層状珪酸塩系鉱物は、複鎖状の角閃石に次ぐ高圧の下に形成されたものと考えられ、図15に示すように、高圧cis型の単鎖状(あるいは複鎖状)のSiO4チェーンが横(b軸)方向にも無限に連結し、SiO4六角環がハチの巣のようにびっしり並んだ平面状のSiO4シートを形作っている。SiO4六角環1個当たりの最小構成単位は、複鎖状チェーンでは4個のSiO4四面体が必要であったのに対し、SiO4シートでは、複鎖状チェーンをb軸方向に連結することにより新たに2倍の六角環が生じるため、2個のSiO4四面体で十分である。
【0031】
従って、層状珪酸塩系鉱物の基本組成は[(Si2O5)2-]nで表され、代表的な例としては、白雲母KAl2(AlSi3O10)(OH)2や黒雲母K(Mg,Fe)3(AlSi3O10)(OH)2などの雲母鉱物と、カオリナイトAl2(Si2O5)(OH)4で代表される粘土鉱物がある。 また、この他にもタルクMg3(Si2O5)2(OH)2や緑泥石(Mg,Fe,Al)6(Si,Al)4O10(OH)8など、層状珪酸塩系鉱物の種類は多い。なお、層状珪酸塩系鉱物は、マクロの形状としては、粒状または粉体状のいずれの形状であってもよい。
【0032】
ベントナイトは、化学組成別鉱物分類において、珪酸塩系鉱物に含まれ、その中の層状珪酸塩系鉱物として分類される。層状珪酸塩系鉱物は、さらに、雲母グループ、緑泥石グループ、カオリナイトなどの蛇紋石グループ、スメクタイトグループに分類されるが、この内、ベントナイトはスメクタイトグループに属する。
【0033】
ベントナイトは、粘土鉱物モンモリロナイトを主成分として、石英、α-クリストバライト、オパールなどの珪酸鉱物を副成分として、長石、マイカ、ゼオライトなどの珪酸塩鉱物、カルサイト、ドロマイト、ジプサムなどの炭酸塩鉱物や硫酸塩鉱物、さらにパイライトなどの硫化鉱物を随伴する弱アルカリ性粘土岩の名称である。ベントナイトは膨潤する土であることから、別名「膨潤土」と称されている。
【0034】
ベントナイトに含有される各鉱物を構成する元素は、地殻を構成する主要元素Si,Al,Fe,Mg,Ca,Na,K,O,H,S,Cからなっており、一般的な岩石の化学組成と類似している。なお、ベントナイトの一般的な化学組成を化学式1に示す。
【0035】
(Na,Ca)0.3(Al,Mg)2Si4O10(OH)2・nH2O・・・化学式1
【0036】
一方、バーミキュライトも、スメクタイトグループに属する。より詳しくは、バーミキュライトとは、マグネシア(MgO)の多い輝岩が、熱水の影響でアルカリ分逸脱して水分が加わり、雲母の性質を帯びた鉱物で雲母の一種である。そのため、バーミキュライトは薄い膜状の鉱物が幾層にも積み重なった構造をしている。
【0037】
バーミキュライトの化学主成分としては、シリカ(SiO2)やアルミナ(Al2O3)マグネシア(MgO)分がある。バーミキュライトを約800~1000度で加熱することにより、雲母の層がアコ-デオン状に剥離膨張し容積を増やす様子が、蛭が伸びるようになるので、バーミキュライトには蛭石の別名がある。バーミキュライトは、この雲母の層の隙間が大きい為に、乾燥した状態では空気が入り軽くなり、また、水が入ると保水機能が高くなる性質を有する。なお、バーミキュライトの一般的な化学組成を化学式2に示す。
【0038】
(Mg,Fe,Al)3(Al,Si)4O10(OH)2・4H2O・・・化学式2
【0039】
ベントナイト、バーミキュライト等の層状珪酸塩鉱物は、保水力、保肥力、遠赤外線効果などを持つと言われており、培地に添加することにより、従来の培地に比べて適正な水分を菌糸に持続的に供給し、イオン交換作用による過剰なミネラル成分を取り込み、不足するミネラル成分を供給する働きを持つと考えられる。さらに、遠赤外線効果により菌糸の活性を増長すると考えられる。これらの効果が相乗効果として、従来の培地よりも、優れた菌糸の成長効果が得られたと判断する。
【0040】
さらに、ベントナイト等は、pH7.5からpH10.5(2%溶液)と弱アルカリ性であるため、酸性傾向となる培地にpH調整剤を添加しなくても、菌糸の生育範囲のpH値を保つことができる。
【0041】
ここで、上述の人工栽培用培地において、層状珪酸塩系鉱物の含有率(重量比)は、1%以上20%以下の範囲内であることが好ましい。実施例で後述する表1で示すように、層状珪酸塩系の含有率(重量比)がこの範囲内であれば、食用または薬用の腐生性きのこの菌糸の生育が促進されるからである。
【0042】
特に、層状珪酸塩系鉱物がベントナイトである場合には、ベントナイトの含有率(重量比)は、3%以上20%以下の範囲内であることが好ましく、3%以上8%以内の範囲内であれば最も好ましい。ベントナイトの含有率(重量比)が8%を超えると、製造コストが上昇し、粘性が高くなりすぎて、攪拌の際に攪拌機に大きな負荷がかかる場合がある。
【0043】
また、層状珪酸塩系鉱物がバーミキュライトである場合には、バーミキュライトの含有率(重量比)は、1%以上20%以下の範囲内であることが好ましい。なお、後述する実施例で示したバーミキュライトの含有率は容量比で記載しているが、バーミキュライトのかさ比重は約0.1であるため、バーミキュライトの含有率(容量比)15%は含有率(重量比)1.5%程度に相当する。
【0044】
また、きのこが資化性を有する有機基質としては、例えば、大鋸屑(おがくず)などの木屑、またはこれに替わるコーンコブ、コットンハル、落花生穀粉等を用いることができる。なお、木屑を用いる場合には、広葉オガまたは針葉オガ等を用いることができ、どちらが好適であるかはきのこの種類によって異なる。例えば、広葉オガとしては、コナラ、ミズナラなどの広葉樹系木材から得られる木屑を用いることができる。また、エノキタケの栽培を行う場合には、針葉オガを用いる方が菌糸の生育が良好である。
【0045】
また、上述のきのこが資化性を有する有機基質には、きのこの菌糸の生育を促進するために、大鋸屑にくわえて、別の資化性に優れる栄養体が含まれていることが好ましい。このような栄養体としては、例えば、米ぬか、コーンブラン、大豆粕およびフスマなどを好適に用いることができる。
【0046】
さらに、上述のきのこの人工栽培用培地には、適量の水分が加えられて、適切な範囲の水分量が調整されることが好ましい。そして、上述のきのこの人工栽培用培地には、pH調整のために加えるpH調整剤や、きのこの子実体の収量を増加させるための増収剤や、人工栽培用培地を成形するために用いる塑糊剤などが含まれていてもよい。
【0047】
以下、本実施形態における人工栽培用培地の作用効果について説明する。
【0048】
本実施形態における人工栽培用培地は、食用または薬用の腐生性きのこを栽培するための人工栽培用培地である。また、この人工栽培用培地は、きのこが資化性を有する有機基質と、層状珪酸塩系鉱物とを含む。このように、腐生性きのこが資化性を有する有機基質を含む人工栽培用培地に、さらに層状珪酸塩系鉱物を含有させることにより、食用または薬用の腐生性きのこの菌糸の生育を促進することができる。その結果、この方法によれば、腐生性きのこの子実体を発生させるまでの培養日数を短縮することができる。
【0049】
本実施形態における人工栽培方法は、食用または薬用の腐生性きのこを生産するための人工栽培方法である。また、この人工栽培方法は、上述の人工栽培用培地に、きのこの種菌を接種するステップと、きのこの種菌を接種された人工栽培用培地をインキュベーションして、きのこの菌糸を成長させ、きのこの子実体を生成させるステップとを含む。
【0050】
このように、腐生性きのこが資化性を有する有機基質を含む人工栽培用培地に、さらに層状珪酸塩系鉱物を含有させることにより、食用または薬用の腐生性きのこの菌糸の生育を促進することができる。その結果、この方法によれば、腐生性きのこの子実体を発生させるまでの培養日数を短縮することができる。
【0051】
本実施形態における人工栽培用培地において、上述の層状珪酸塩系鉱物は、スメクタイトグループに属する鉱物を含んでもよい。このとき、上述の層状珪酸塩系鉱物は、ベントナイトまたはバーミキュライトに属する鉱物を含んでもよい。
【0052】
すなわち、本実施形態では、特許文献1に記載のテクト(網状)珪酸塩鉱物中のひとつである沸石グループに属するゼオライトなどとは異なり、フィロ(層状)珪酸塩鉱物中のひとつであるスメクタイトグループに属するベントナイトなどを用いる。そのため、特許文献1では、機能的には、ゼオライト等の結晶構造内の多孔質内部を利用するが、本実施形態では、ベントナイト等の層間の働きを主として利用するため、機能を発揮するメカニズムが全く異なる。
【0053】
よって、特許文献1に記載の技術では、腐生性きのこの菌糸の生育を促進することができるか否かは不明であるが、本実施形態では、腐生性きのこの菌糸の成長を促進することができる。その結果、本実施形態では、腐生性きのこの子実体を発生させるまでの培養日数を短縮することができる。
【0054】
本実施形態における人工栽培用培地において、上述の層状珪酸塩系鉱物は、ベントナイトおよびバーミキュライトの両方を含む混合物であってもよい。
【0055】
この構成によれば、後述する実施例の表5に示すように、腐生性きのこが資化性を有する有機基質を含む人工栽培用培地に、さらにベントナイトおよびバーミキュライトの両方を含む混合物を含有させることにより、ベントナイトおよびバーミキュライトの相乗効果が得られるため、腐生性きのこの菌糸の成長をより一層促進することができる。
【0056】
本実施形態における人工栽培用培地において、上述の層状珪酸塩系鉱物の形状は、粒状または粉体状であってもよい。
【0057】
この構成によれば、層状珪酸塩系鉱物の形状が、表面積の大きい粒状または粉体状であるため、層状珪酸塩系鉱物同士の間に適切な空隙を確保することができ、ベントナイト等の層間の空間をより効率的に機能させることができる。その結果、この構成によれば、腐生性きのこの菌糸の成長を促進することができ、腐生性きのこの子実体を発生させるまでの培養日数を短縮することができる。
【0058】
本実施形態における人工栽培用培地において、上述の層状珪酸塩系鉱物の重量比の含有率は、1%以上20%以下とすることができる。
【0059】
この構成によれば、後述する実施例の表5に示すように、腐生性きのこが資化性を有する有機基質を含む人工栽培用培地に、適切な量の層状珪酸塩系鉱物を含有させることにより、ベントナイト等の層間の空間として、適切な量の空間を確保することができ、ベントナイト等の層間の空間を適切な範囲内で機能させることができる。その結果、この構成によれば、腐生性きのこの菌糸の成長を促進することができ、腐生性きのこの子実体を発生させるまでの培養日数を短縮することができる。
【0060】
本実施形態における人工栽培用培地において、上述の有機基質は、広葉オガ、針葉オガ、コットンハル、コーンコブおよび落花生穀粉からなる群から選ばれる1種以上の基材と、米ぬか、コーンブラン、大豆粕およびフスマからなる群から選ばれる1種以上の栄養体とを含んでもよい。
【0061】
この構成によれば、後述する実施例の各表に示すように、広葉オガ、針葉オガ、コットンハル、コーンコブおよび落花生穀粉からなる群から選ばれる1種以上の基材と、米ぬか、コーンブラン、大豆粕およびフスマからなる群から選ばれる1種以上の栄養体とを用いるため、腐生性きのこの菌糸の好適な成長を実現することができ、腐生性きのこの子実体を順調に収穫することができる。
【0062】
本実施形態における人工栽培用培地において、上述の食用または薬用の腐生性きのこは、エノキタケ、ナメコ、エリンギ、ブナシメジ、ハナビラタケおよびシイタケからなる群から得られる1種以上のきのこであってもよい。
【0063】
この構成によれば、エノキタケ、ナメコ、エリンギ、ブナシメジ、ハナビラタケおよびシイタケは、いずれも腐生性のきのこであるため、後述する実施例の各表に示すように、腐生性きのこが資化性を有する有機基質を含む人工栽培用培地に、さらに層状珪酸塩系鉱物を含有させることにより、食用または薬用の腐生性きのこの菌糸の生育を促進することができる。その結果、この方法によれば、腐生性きのこの子実体を発生させるまでの培養日数を短縮することができる。
【0064】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0065】
例えば、上記実施の形態では、腐生性のきのことして、エノキタケ、ナメコ、エリンギ、ブナシメジ、ハナビラタケおよびシイタケを例に挙げたが、特に限定する趣旨ではない。例えば、ヒラタケ、タモギタケなどを用いてもよい。これらのきのこも同様に腐生性のきのこであるため、同様に菌糸の生育を促進することができ、きのこの子実体を発生させるまでの培養日数を短縮することができる。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0067】
なお、本実施例では、有機物および栄養体を含む基本培地にベントナイトまたはバーミキュライトを含有させ、エノキタケ、ナメコ、エリンギなどを培養した場合の複数の種類の実験内容を示す。
【0068】
1.エノキタケのベントナイト含有量による菌糸成長比較
試験管1本あたり、広葉オガ90ccに、米ぬか、コーンブランおよびフスマの重量比が2%、3%、5%となるように、それぞれを栄養体として添加し、水分量を約65%に調整した条件で攪拌して培地を作製した。以下、この培地を基本培地と称する。
【0069】
さらに、この基本培地に、重量比が3%、5%、8%、10%、12%、20%となるように、ベントナイトをそれぞれ添加し、水分量を約65%に調整をした培地を作製し、30mmφの試験管に各4本ずつ充填し、オートクレーブにて滅菌処理を行い、エノキタケの菌糸を接種し、活着後に一定期間経過後の時点からの菌糸成長を測定した。この比較測定結果を表1、図1および図2に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
この表1、図1および図2の結果から、ベントナイトの含有量が3%以上20%以下の範囲内では、エノキタケの菌糸伸長は良好であることが分かる。なお、ベントナイトの扱いやすさや、コスト等を考慮すると、ベントナイトの含有量は3%以上8%以下の範囲内がより好適であると判断される。
【0072】
2.他のきのこによる菌糸成長比較
上述のように、エノキタケによるベントナイトの成長促進実験の結果は有効であった。次に、エノキタケ以外のきのこにも、ベントナイトの成長促進作用が認められるかについて、確認のための実験を行った。
【0073】
上述の基本培地と、この基本培地にベントナイトを重量比5%加えたものと、をそれぞれ同じ種類の試験管に同量充填し、ナメコ、エリンギの菌糸をそれぞれ接種した。これらの接種した菌糸が活着後に一定期間経過後の時点からの菌糸成長を、比較して測定した結果を表2、図3および図4に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
表2、図3および図4に示したように、ナメコ、エリンギについても、ベントナイトを重量比5%含有させた基本培地においては、エノキタケと同様に、菌糸成長を促進する効果が得られた。
【0076】
3.その他の層状珪酸塩鉱物による効果
その他の層状珪酸塩鉱物を含有する培地として、主材の広葉オガの容量比を75%とし、バーミキュライトの容量比を25%とした培地を作製し、米ぬか、コーンブランおよびフスマをそれぞれ重量比の2%、3%、5%となるように栄養体としてこの培地に添加し、水分量約65%にて攪拌した培地を作製した。
【0077】
そして、この培地と、上述の基本培地と、を同じ種類の試験管に同量充填し、エノキタケを摂取して菌糸の成長比較を行った。これらの培地間の菌糸成長の比較結果を表3に示す。
【0078】
【表3】
【0079】
表3に示したように、バーミキュライトを含有させた培地でも、ベントナイトを含有させた培地と同様に、菌糸成長を促進する効果があることを確認することができた。
【0080】
4.ベントナイトおよびバーミキュライトの相乗効果
また、2種類以上の層状珪酸塩鉱物の混合物の効果を確認することを目的として、主材の広葉オガの容量比を85%とし、バーミキュライトの容量比を15%とした培地を作製し、米ぬか、コーンブランおよびフスマをそれぞれ重量比が2%、3%、5%となるように栄養体としてこの培地に添加し、さらに、ベントナイトの重量比が5%となるように添加した上で、水分量約65%に調整された培地を作製した。以下、この培地を複合培地と称する。
【0081】
次いで、上述の複合培地と、上述の基本培地との間で、エノキタケの菌糸成長比較を行った。これらの培地間の菌糸成長の比較結果を表4、図5および図6に示す。
【0082】
【表4】
【0083】
表4、図5および図6に示したように、ベントナイトおよびバーミキュライトを両方含む複合培地では、基本培地に比べて(さらには、基本培地にベントナイトを単独で加えた培地および基本培地にバーミキュライトを単独で加えた培地に比べても)、エノキタケの菌糸成長が促進されることが分かった。このことから、複合培地では、ベントナイトおよびバーミキュライトの相乗効果が得られることが示唆される。
【0084】
5.その他の有機物を主材とした場合のベントナイトおよびバーミキュライトの相乗効果
主材として、その他の有機物を用いた場合でも、ベントナイトおよびバーミキュライトの相乗効果があるか確認することを目的として、主材としてコーンコブと落花生穀粉とを容量比で7対3に配合した培地に、米ぬか、コーンブランおよびフスマをそれぞれ重量比の2%、3%、5%となるように栄養体として添加した培地を作製した。また、この培地にベントナイトを重量比で5%添加した培地を作製した。
【0085】
さらに、主材としてコーンコブ対落花生穀粉対バーミキュライトを、容量比で55対20対25となるように配合した培地に、米ぬか、コーンブランおよびフスマをそれぞれ重量比の2%、3%、5%となるように栄養体として添加し、水分量約65%に調整された培地を作製した。
【0086】
また、主材としてコーンコブ対落花生穀粉対バーミキュライトを、容量比で65対20対15となるように配合した培地に、米ぬか、コーンブランおよびフスマをそれぞれ重量比の2%、3%、5%となるように栄養体として添加した培地に、さらにベントナイトを重量比5%となるように添加した上で、水分量約65%に調整された培地を作製した。これら4種類の培地について、エノキタケの菌糸成長を比較した結果を表5、図7および図8に示す。
【0087】
【表5】
【0088】
表5、図7および図8に示したように、コーンコブおよび落花生穀粉の有機物を主材とする培地では、菌糸成長は全体的に遅いが、成長度の比較においては、広葉オガを主材とする培地の場合と同様に、ベントナイトまたはバーミキュライトを添加することにより、菌糸成長を促進することができ、ベントナイトおよびバーミキュライトの混合物を添加することにより、さらに一層菌糸成長を促進することができることがわかる。
【0089】
6.ビン栽培による菌糸蔓延日数比較
上述のように、試験管によるベントナイトなどの層状珪酸塩鉱物添加は、各種きのこにおいて菌糸成長に効果があることは確認できたが、種菌接種後に一定期間経過した後の時点からの安定した菌糸の成長を確認したことになる。
【0090】
一方、実際の人工栽培においては、種菌接種からどれくらいで菌糸が蔓延するかが重要となるため、実栽培に用いるビン栽培を行った場合、接種から菌糸がどれくらいで蔓延するかの確認を行った。
【0091】
具体的には、主材、栄養対比率はそのままに固定した基本培地と、この基本培地にベントナイトの含有量を重量比5%に固定して、同一条件の環境下にて、エノキタケ、ナメコ、エリンギの培養を850ccのビンにて行った。種菌を接種してから菌糸が蔓延した日数の比較を表6、図9~11に示す。
【0092】
【表6】
【0093】
この表6、図9~11の結果より、ビン栽培におけるエノキタケ、ナメコ、エリンギ、ブナシメジの菌糸が蔓延する日数は、試験管における菌糸成長が裏付けるように、相当日数短縮できることが確認された。
【0094】
7.栽培培養日数、発生から収穫までの日数、収量の比較
上述のように、菌糸蔓延日数については効果が充分あることが確認できた。しかし、エノキタケの場合には、そのまま菌掻き、発生となるが、ナメコ、エリンギの場合には、菌糸蔓延後にも、きのこの発生に向け熟成培養が必要になる。
【0095】
このため、熟成培養日数、発生から収穫までの日数および収量はどのように差異があるのか、エリンギに特定して実験した。この際、基本培地と、基本培地に重量比5%のベントナイトを添加した培地について確認を行った。これらの確認結果を表7および図14に示す。
【0096】
【表7】
【0097】
表7および図14の結果から、菌糸蔓延日数が短縮された分に加え、熟成培養日数も短縮されており、発生から収穫までの日数、子実体の収量についても好適であるという結果が得られた。
【0098】
なお、上述と同様の実験をエノキタケおよびナメコについても行った結果を、図12および図13に示す。図12および図13の結果から、エリンギだけではなく、エノキタケおよびナメコについても、きのこの子実体を発生させるまでの培養日数が短縮されるという結果が得られた。
【0099】
8.まとめ
本実施例の実験結果を、以下の表8にまとめる。
【0100】
【表8】
【0101】
本実施例によれば、ベントナイト等の層状型珪酸塩鉱物を、1種類のみまたは2種類以上混合して培地に加えたことにより、食用または薬用のきのこの培養日数が、表8に示すように、20%以上30%以下の範囲内で短縮することができた。
【0102】
以上、本発明を実施例に基づいて説明した。この実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0103】
たとえば、上記実施例では、主材として広葉オガ、針葉オガ等の大鋸屑、またはこれに替わるコーンコブ、フスマ、落花生穀粉等の有機物を用いたが、一般にきのこの栽培養培地として用いられる他の有機物を用いてもよい。この場合も、ベントナイト、バーミキュライト等の層状型珪酸塩鉱物を、1種類のみまたは2種類以上混合して培地に加えることにより、きのこの培養日数を短縮することができる。
【0104】
また、上記実施例では、栽培されるきのことして、エノキタケ、ナメコ、エリンギ等を用いたが、一般に食用または薬用に栽培される、ブナシメジ、マイタケ、シイタケなどの他のきのこを栽培してもよい。この場合も、ベントナイト、バーミキュライト等の層状型珪酸塩鉱物を、1種類のみまたは2種類以上混合して培地に加えることにより、きのこの培養日数を短縮することができる。
【0105】
また、上記実施例では、添加される栄養体として、米ぬか、コーンブランおよびフスマ等を用いたが、一般にきのこの栽培に用いられる、他の栄養体を用いてもよい。この場合も、ベントナイト、バーミキュライト等の層状型珪酸塩鉱物を、1種類のみまたは2種類以上混合してこれらの栄養体を含む培地に加えることにより、きのこの培養日数を短縮することができる。
【0106】
また、上記実施例では、比較のために主材および栄養体を、きのこの種類が異なる場合にも、同様の種類で、同様の比率にして比較したが、特に上述の種類および比率からなる混合組成に限定する趣旨ではない。
【0107】
例えば、上述の主材および栄養体の種類および比率を変化させて、培地の混合組成を異なる組成にしても、その混合組成がきのこの培養に好適であれば、ベントナイト、バーミキュライト等の層状型珪酸塩鉱物を、1種類のみまたは2種類以上混合して培地に加えることにより、きのこの培養日数を短縮することができる。特に、主材、栄養体を、きのこの種類別に最適な配合にすれば、さらに培養期間短縮に効果があると期待される。
【産業上の利用可能性】
【0108】
以上のように、本発明にかかるきのこの人工栽培用培地は、腐生性きのこの菌糸の成長を促進することができるという効果を有し、きのこの人工栽培用培地、およびそれを用いるきのこの人工栽培方法等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】基本培地中のベントナイト含有率によるエノキタケの菌糸成長の比較結果を示す写真図である。
【図2】図1の比較結果をまとめたグラフである。
【図3】基本培地および基本培地にベントナイト5%(重量比)を含有させた培地の間でのナメコの菌糸成長の比較結果を示す写真図である。
【図4】基本培地および基本培地にベントナイト5%(重量比)を含有させた培地の間でのエリンギの菌糸成長の比較結果を示す写真図である。
【図5】主材を広葉オガとして、左より無添加、ベントナイト5%(重量比)、バーミキュライト25%(容量比)、ベントナイト5%(重量比)+バーミキュライト15%(容量比)の間でのエノキタケの菌糸成長の比較結果を示す写真図である。
【図6】図5の比較結果をまとめたグラフである。
【図7】主材をコーンコブ、落花生穀粉として、左より無添加、ベントナイト5%(重量比)、バーミキュライト25%(容量比)、ベントナイト5%(重量比)+バーミキュライト15%(容量比)の間でのエノキタケの菌糸成長の比較結果を示す写真図である。
【図8】図7の比較結果をまとめたグラフである。
【図9】左側を基本培地とし、右側を基本培地にベントナイト5%(重量比)を含有させた培地とした場合の、エノキタケの菌糸蔓延の比較結果を示す写真図である。
【図10】左側を基本培地とし、右側を基本培地にベントナイト5%(重量比)を含有させた培地とした場合の、ナメコの菌糸蔓延の比較結果を示す写真図である。
【図11】左側を基本培地とし、右側を基本培地にベントナイト5%(重量比)を含有させた培地とした場合の、エリンギの菌糸蔓延の比較結果を示す写真図である。
【図12】左側を基本培地とし、右側を基本培地にベントナイト5%(重量比)を含有させた培地とした場合の、エノキタケの子実体成長差を示す写真図である。
【図13】左側を基本培地とし、右側を基本培地にベントナイト5%(重量比)を含有させた培地とした場合の、ナメコの子実体成長差を示す写真図である。
【図14】左側を基本培地とし、右側を基本培地にベントナイト5%(重量比)を含有させた培地とした場合の、エリンギの子実体成長差を示す写真図である。
【図15】層状珪酸塩系鉱物の四面体層と八面体層の組合せについて説明するための概念図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用または薬用の腐生性きのこを栽培するための人工栽培用培地であって、
前記きのこが資化性を有する有機基質と、
層状珪酸塩系鉱物と、
を含むことを特徴とする人工栽培用培地。
【請求項2】
請求項1記載の人工栽培用培地において、
前記層状珪酸塩系鉱物は、スメクタイトグループに属する鉱物を含むことを特徴とする人工栽培用培地。
【請求項3】
請求項1記載の人工栽培用培地において、
前記層状珪酸塩系鉱物は、ベントナイトまたはバーミキュライトに属する鉱物を含むことを特徴とする人工栽培用培地。
【請求項4】
請求項1記載の人工栽培用培地において、
上記層状珪酸塩系鉱物は、ベントナイトおよびバーミキュライトの両方を含む混合物であることを特徴とする人工栽培用培地。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれかに記載の人工栽培用培地において、
前記層状珪酸塩系鉱物の形状は、粒状または粉体状であることを特徴とする人工栽培用培地。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれかに記載の人工栽培用培地において、
前記層状珪酸塩系鉱物の重量比の含有率は、1%以上20%以下であることを特徴とする人工栽培用培地。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれかに記載の人工栽培用培地において、
前記有機基質は、
広葉オガ、針葉オガ、コットンハル、コーンコブおよび落花生穀粉からなる群から選ばれる1種以上の基材と、
米ぬか、コーンブラン、大豆粕およびフスマからなる群から選ばれる1種以上の栄養体と、
を含むことを特徴とする人工栽培用培地。
【請求項8】
請求項1乃至7いずれかに記載の人工栽培用培地において、
前記食用または薬用の腐生性きのこは、エノキタケ、ナメコ、エリンギ、ブナシメジ、ハナビラタケおよびシイタケからなる群から得られる1種以上のきのこであることを特徴とする人工栽培用培地。
【請求項9】
食用または薬用の腐生性きのこを生産するための人工栽培方法であって、
請求項1乃至8いずれかに記載の人工栽培用培地に、前記きのこの種菌を接種するステップと、
前記きのこの種菌を接種された前記人工栽培用培地をインキュベーションして、前記きのこの菌糸を成長させ、前記きのこの子実体を生成させるステップと、
を含むことを特徴とする人工栽培方法。
【請求項1】
食用または薬用の腐生性きのこを栽培するための人工栽培用培地であって、
前記きのこが資化性を有する有機基質と、
層状珪酸塩系鉱物と、
を含むことを特徴とする人工栽培用培地。
【請求項2】
請求項1記載の人工栽培用培地において、
前記層状珪酸塩系鉱物は、スメクタイトグループに属する鉱物を含むことを特徴とする人工栽培用培地。
【請求項3】
請求項1記載の人工栽培用培地において、
前記層状珪酸塩系鉱物は、ベントナイトまたはバーミキュライトに属する鉱物を含むことを特徴とする人工栽培用培地。
【請求項4】
請求項1記載の人工栽培用培地において、
上記層状珪酸塩系鉱物は、ベントナイトおよびバーミキュライトの両方を含む混合物であることを特徴とする人工栽培用培地。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれかに記載の人工栽培用培地において、
前記層状珪酸塩系鉱物の形状は、粒状または粉体状であることを特徴とする人工栽培用培地。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれかに記載の人工栽培用培地において、
前記層状珪酸塩系鉱物の重量比の含有率は、1%以上20%以下であることを特徴とする人工栽培用培地。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれかに記載の人工栽培用培地において、
前記有機基質は、
広葉オガ、針葉オガ、コットンハル、コーンコブおよび落花生穀粉からなる群から選ばれる1種以上の基材と、
米ぬか、コーンブラン、大豆粕およびフスマからなる群から選ばれる1種以上の栄養体と、
を含むことを特徴とする人工栽培用培地。
【請求項8】
請求項1乃至7いずれかに記載の人工栽培用培地において、
前記食用または薬用の腐生性きのこは、エノキタケ、ナメコ、エリンギ、ブナシメジ、ハナビラタケおよびシイタケからなる群から得られる1種以上のきのこであることを特徴とする人工栽培用培地。
【請求項9】
食用または薬用の腐生性きのこを生産するための人工栽培方法であって、
請求項1乃至8いずれかに記載の人工栽培用培地に、前記きのこの種菌を接種するステップと、
前記きのこの種菌を接種された前記人工栽培用培地をインキュベーションして、前記きのこの菌糸を成長させ、前記きのこの子実体を生成させるステップと、
を含むことを特徴とする人工栽培方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
출처 : [Daum우수카페]귀농사모/한국귀농인협회
글쓴이 : 더불어 같이 원글보기
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